あの日ハオの心を受け止めて、私の心をハオに贈って、
私たちは世に言う恋人同士となった。

次代の嫁が決まった。
それは麻倉家にとってとても大きな意味を持つ事で、
当代のおじいちゃんには二人で挨拶をした。
おじいちゃんは少し驚いていたようだった。
そういう話はまだ私たちには早いって思ってたみたいだけど、
もう決めたのだ。
他でもない、私たちが。

それを言ったら父さまも母さまも驚いていたけど、
何となくそんな予感がしてたって、私たちを抱き締めてくれた。
たまおなんか、泣きながら祝福してくれた。

そうして正式に私がハオの許嫁となり、
アンナが葉の許嫁になった。
葉もアンナも照れていたけど、この二人なら大丈夫だと思った。
葉が好きなたまおは少し残念そうだったけど、
アンナが葉のファンなら許すと言ったら涙目になって喜んでいた。

「ねぇ、。本当に僕で良かったの?」

縁側に並んで座って、庭の桜を眺める。
はらりはらりと桜の花びらが舞い落ちて、地面に薄桃色の絨毯を作る。
桜。
私は一生桜に包まれた世界の美しさを忘れられないと思った。

「『ハオで良かった』じゃなくて、『ハオが良かった』の」

そう言うとハオは少し面食らって、
それから少しだけ顔を伏せて静かに笑った。

「そうだね」
「うん、そうだよ」

そよ風のように静かに笑って、私たちは手を重ねた。
今はまだこういう関係でいい。
私はハオの嫁になるっていう覚悟ができたから、
その他は何も変わらなくていい。
今のままで、何も望まない。



不意に名前を呼ばれて、頬にキスをされる。
優しい、春の日差しのようなキスだった。

そう、それだけでいい。
何も変わらないままで、少しずつ進んでいけば良い。
私はまだ嫁じゃない。
許嫁。
そのモラトリアムを二人で楽しめれば、それだけでいい。
この幸せを二人で共有できるなら、それだけでいい。
二人で、同じ歩幅で世界を共有する事の幸せを噛み締める。

この先何があるか分からない。
けれど、私は多分、何があっても変わらない。
何があっても後悔しない。
何があってもこの気持ちの原点は変わらない。
ずっとハオを好きなままでいる。
ずっとハオを好きなまま、どんどんハオを好きになっていく。
ずっと、ずっと…。

(2008/03/23) 貴方がいるから、世界はこんなにも美しい。




メニュ