【アンナ】

出雲の麻倉から電話があって、
とハオが婚約した事を聞いた。
そして、あたしが葉の許嫁になった。

それを聞いた時、正直、やっとくっついたかって思った。
ハオがを好きなのは歴然だった。
もそれを拒んでいないのも明らかだった。
あたしのこの特殊な能力が使えなくなっても、
そんな事は一歩下がった所から見ていたらすぐに分かる。

ちょうど春休みだったからあたしは単身出雲に赴き、
当代である葉明から正式な婚約を言い渡された。
あたしはそれを受け止め、葉の許嫁になる事を享受した。

「アンナ、ごめん…」

そう言われて、あたしはに抱き締められた。
は少し震えていた。
はあたしの気持ちを知っていたから、
誰にも相談せずに勝手にハオと婚約した事と、
あたしが気持ちを伝える前に許嫁にされた事を謝っていたのだと思う。
そんな事、些細な事じゃない。
先か後か、それだけの話よ。

「馬鹿ね。謝る事なんて何もないわ」

あたしはを抱き締め返して、
幸せになりなさいと耳元で囁いた。
は小さく頷いて、あたしの首に顔を埋めた。

「アンナには悪い事をしたね…。ごめん」

ハオはもちろんあたしの気持ちを知っているから、
と同じような理由で謝ってきた。
ただ、こいつの場合、そこに罪悪感は存在していなかった。
だから、を泣かせたら絶対に許さないと脅しつけておいた。

「アンナ様、良かったですね…」

心にもない事を言うのはたまお。
この子は葉が好きだから、祝福する反面、とても悲しんでいた。
だから、あたしはこの子に報いなければならない。
たまおの分も愛すから心配はいらないわ。
あんたは一生葉のファンでいてあげなさい。
そう気丈に言ったら、たまおは泣いた。

「アンナ、オイラでいいんか…?」

そう、自信なさそうに言うのは葉だ。
あたしの頭に一番カチンと来た言葉もこれだった。

渦中の人物であり、同時に蚊帳の外だった葉。
葉はあたしの気持ちを無視して婚約した事に罪悪感を抱いているようだった。
そこに罪なんてない事に、どうして誰も気付けないのよ。

「今のあんたみたいな男は嫌よ」

だから、あたしを満足させるくらいの男になりなさい。
そうじゃないと、あんたの事一生恨んでやるからね。
そう言ったら、葉は顔を赤くさせて、それから俯いた。
あたしはあんたとなら幸せになれるって、信じてるんだからね。
ねぇ、そうでしょう、葉。

(2008/03/26) この世には、誰もが幸せになれる道も存在するのよ。




メニュ